春から学んできた国産精油
今日が授業の最終回、卒論発表がありました
私は「がん終末期の緩和ケアに活かす国産精油
~患者さんに届けたい日本のアロマ~」
というタイトルで発表をさせていただきました
病院や施設の中で国産のアロマを活用したい
という思いは
施設でアロマの活動を始めた約10年前から
常に心に思い描いていたことでした
オレンジのアロマのことを
「みかん」と呼ぶ患者さんや
精油ボックスの中に並ぶ
見慣れない横文字のアロマの名前に
「よくわからないからお姉さんにお任せするよ」
と言う患者さんがとても多かったからです
そんな中でも
柑橘の産地で幼少期を過ごした患者さんが
オレンジのアロマを嗅いで
小学生の頃学校が終わるとミカン畑で
友達と駆け回って遊んでいたこと
その高台にあるミカン畑からは海も見えたんだと
目を輝かせながら話してくれたことがありました
そして患者さんが語るその景色は
話を聞かせてもらった私の中にも鮮やかに描き出され
まるで私も昔に戻った患者さんと一緒に
素朴だけど、とても美しいミカン畑からの
景色を眺めているような
そんな気持ちになったことを
今でもよく覚えています
香りの中で昔を懐かしく語る瞬間の
患者さんたちはみな
今抱える病気や痛み、苦しみ
不安から解き放たれて
生きる喜びに満ち溢れた過去の時間の中で
その時に感じていた幸せを
もう一度味わっているかのように
見えるのです
人生の終末期、病院のベッドの上で忘れかけていた
生きる喜びに満ち溢れた日々を
思い出すことができるのは
そこにアロマの香りがあるからこそと
強く思います
北海道モミが厳しい自然の中で力強く生きる姿
永遠に香る果実と古来から表現される
戸田香果橘(へだたちばな)
邪気を払い心身を清めるとされる青森ヒバ
高野山で今も枝葉が神前に供えられる空海高野槇
神木として祀られ、霊力によって人の魂を活気づけ
生命力を回復させる筑後樟脳・・・
国産の精油の香りの中には
古来の日本人がその土地土地の自然と繋がり
植物の恵みを受けながら暮らしてきた歴史が
詰まっていて
そのストーリーはどれも私たち日本人の魂に響き
時に生きる力を与え
病気があったとしても、今ここにある命を
輝かせることを支えてくれるはずです
日本人がラベンダーの香りを嗅いで思い出すのは
やはりフランスでなく、北海道
ラベンダーのアロマで
北海道を旅した思い出を語る方
時にはラベンダーの時期に北海道を
旅したかったけど
結局行くことができなかった
というような後悔を語られる方もおられます
私の夢は、日本の47都道府県の香りで
患者さんに「香りの旅」を届けること
自分の生まれ故郷、旅行で訪れた思い出の町
行きたくても行けなかった場所にも
そこに香りがあれば
心は自由に旅することができます
私は病院の中でセラピストとして
そういうお手伝いができる存在でありたい
国産精油の今後の発展を心から願っています